毛 布

81.毛布のはじまり
「日本書紀」には欽明天皇15年(554年)に百済の聖明王が新羅討伐の援軍を要請した時に貢物として「からにしき」二疋と毛せんの一種の「おりかも」一領を献じたり、同じ時代に下野国から羚羊の毛と絹糸を交織した「けむしろ」が献上されたとある。さらに文武天皇の慶雲元年(704年)に越後から、兎の毛と絹糸とを交織した布を献上されたという古い記録がある。毛織物は鎌倉時代、室町時代には中国、朝鮮から、安土桃山時代にはヨーロッパからと次々と入ってきた。しかしこの時代は数量も少なく貴重品でもっぱら大名の陣羽織、槍印、火事装束、合羽などに利用された。
明治初期に陸軍はフランス式に海軍はイギリス式にと軍隊の洋風化によって毛織物の需要が急速に増大して毛織物の対外支払いが巨大なものとなったことから、官営の羅紗器械所が明治九年(一八七六年)に設立された。これが千住製絨所の前身であり、日本での最初の毛織物工場である。千住製絨所は明治21年(1888年)に陸軍省に移管され、陸軍用の毛織物を製造し、明治26年からは毛布を製造し、模範的な工場として第二次大戦終結まで国営工場として稼働していた。
この千住製絨所の成功に刺激されたここと、国の指導などもあって民間でも羊毛工場が設立されるようになった。後藤恕作氏が明治13年芝白金台に羊毛製糸会社を設立して牛毛や支那羊毛を原料として手織りでじゅうたん、だんつうなどを製造したのが民間の始まりである。その後東京毛布製造会社、東京毛糸紡績株式会社、明治21年には大阪毛糸紡績株式会社など次々と民間の羊毛工業の工場が設立された。しかしいずれも官庁用の製絨が主であって、一般に毛布が普及したのは大正から昭和にかけてである。

82.毛布の種類と特性
毛布はふとんよりは軽く、たたんでの容積も小さいので便利な寝具として、ほとんどの家庭で使われている。素材・製法によって製品に特徴があって、季節の寒暖に応じて単独に、あるいはふとんとの組み合わせをして保温性を高めるなど、掛用としてばかりでなく敷用としても使われている。
1.毛布の製法による名称と特徴
織り毛布 昔ながらの製法で力織機で製織されたもので、縦糸に細い糸を、横糸には太い糸を使って織り、両面を起毛して毛布としての厚みを出し、含気率を高めて保湿性をよくしてある最も一般的な毛布である。
タフト毛布 昭和38年(1963年)に英国のBTM社から輸入されたタフティングマシンで製織された毛布で、基布にアクリル繊維を植え込んで両面を起毛してある。
従来の力織機とは違って1時間に100m以上もの生産があって価格は割安といえる。
マイヤー毛布 昭和43年(4968年)にドイツ・カールマイヤー製ラッセル機が輸入されてから作られた毛布で、綴り編地の基礎地の二枚を起毛面が外側になるように重ねて周縁を縫い合わせたものである。片面無地・片面プリント柄で、量感もソフト感もあってファッション性がある。
ニューマイヤー毛布 従来のマイヤー毛布の二枚合わせと異なり一枚で両面を起毛した毛布で、軽くソフト感がある。
2.毛布の原材料による分類
動物性繊維 羊毛、キャメル、カシミヤ、アルパカ、モヘアなどの獣毛類や絹製で、保温性、吸湿性、嵩高性、難燃性などがよく、酸に強くアルカリに弱い。白いものは紫外線で黄変するが、おおむね毛布の必要特性を保持しているといえる。
植物性繊維 綿に代表される毛布で、敷用、夏掛用が多い。獣毛より保温性は少ないが、吸湿性はよい。酸に弱いがアルカリに強い。洗たく強度があるし、漂白も可能である。 
合成繊維 アクリル繊維が多く使用されている。動物繊維より軽くソフト感があり、染色性がよいので色柄が引き立つ。吸湿性が少なく、帯電性もあるが、保温性、耐久性、感触がよく、色柄の発色性もよい。また酸、アルカリや日光にも強い。
3.用途による分類
普通のふとんに使用されるもの、ベッド用、敷用などがあり、何れも、シングル、セミダブル、ダブル、長寸などがある。他に、ベビー用、子供用などとそれぞれ適応した寸法がある。
83.電気毛布
寒い夜など入床前に電気毛布でふとんの中を暖めておくと、入床時の冷たい抵抗感もなく気持ちがよいので便利である。ただし電気毛布は一晩中使用せずに入床前だけの使用に留めたい。なぜならもともと体温と寝具の機能によって快適な寝床気候(寝床気候の項参照)が自然に調節されるべきところを、電気毛布を使用することによって、体調とは関係ない温熱による発汗作用で体液が奪われ、これらの水分は寝具の吸湿、排湿作用によって寝具外に排出されるが、多量な発汗では寝具の吸湿・排湿機能が追いつかないと湿度がこもり高温となって寝床内が温度、湿度ともに不適となる。
また皮膚面の過度の乾燥はかゆみの原因となるし、健康的とはいわれない。
病人など代謝機能の低下して保温が難しいとか寝具の使用が出来ないなど、特別な条件の時には入床後にスィッチ切るとか低温にするなど、調節しながら使用する配慮が必要である。

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