●はじめに
多くの人は毎日約8時間の睡眠をとっている。1日の 1/3つまり人生の1/3は眠ることであり、寝具を使用することでもある。
この睡眠をより快適なものとするために作られた寝具類が、製作の段階で不都合があったり、折角の良い寝具もその使用方法に誤りがあったりして、睡眠の妨げとなり、あるいはもろもろの病気をひき起す原因となるようなことはあってはならない。
健康面からもその機能的な特性は重視されるべきであり、寝具類が見掛けや感性だけで作られたり、選択されたりすることは、大変な誤りである。
私たちが眠る時には、敷ふとん・マットレス・掛けふとん・枕・毛布・寝衣・タオルケット・シーツ・カバ―類・・・など多くの種類や品種の寝具類を、季節・寝室環境・健康状態・風習などのさまざまな条件に対応して、多様な組合せを考えながら使用している。
寝具は毎日身近にあって使用しているものでありながら、科学的な研究については他の商品と比較して多いとは言われない。枕については更に少ないようである。寝具類全般にわたる事項については次の機会に詳しく述べることとし、今回は枕に要求されるべき特性について、枕を構成する材料、構造、使用方法や効果などについて材料学・消費科学・人間工学・衛生学・生理学・解剖学等の総合的見地からこれ迄に研究し、発表された諸先輩・諸先生の報文を参考にしながら、枕は如何にあるべきかについて考えてみたい。
枕は使用する人の体形、寝姿、習慣、体調などのほか、季節ごとの気候や寝床気候の相違、敷きふとんやマットレスの硬軟、弾性の強弱、流行などさまざまな違いもあって、同一の枕ですべてのひとが十分満足できるということは難しいことである。
しかし人は自分の健康管理の面からも、出来得る限り自分に最適な枕を望むこともまた当然のことでもある。
枕は寸法、材質、構造などさまざまな仕様の相違で機能の特性も変わり、使用する方法によっても違いが出てくる。
枕の寸法の内の高さだけを見ても、髷のあった江戸時代でも「寿命三寸楽四寸」(守貞漫稿)と長命のためには低い三寸(約9┰)の枕の方がよいとしている。しかし現代では体形や寝床環境の相違もあるので、この高さでも多くの人にとっては高過ぎるようである。
古来から「こぶしの高さ」がよいとの言い伝えがあったり、地方によっては「小指の長さ」「親指の長さ」などとも言われている。研究結果から6〜8cmくらいがよいとの学者の報告や、最近の日本人の体形の変化や習慣で更に低い方がよいという研究者の>意見もあるなど高さ一つをとってもなかなか難しいこともあるが興味の深い問題でもある。
頭部は体の中でも最も重要なところであり、頭部並びにこれに関連するすべてが大切にされなければならない。
頭蓋骨の中にはおよそ140億の細胞からなる脳が収められている。脳は1.3〜1.4・の重量ながら最優秀な機能を持つコンピュ―タ―も及ばない偉大な能力をもっている。機能と構造から大脳(大脳皮質・大脳辺縁系・大脳基底核)、間脳、小脳、脳幹とに分けられ、それぞれ私たちの身体を支える重要な仕事をしている。
首は狭いところに神経・血管・食道・気管・筋肉・頚椎骨などが集中 する重要な部分であり、皮膚も薄い。また頭部を支えているところでも ある。
大脳からの命令は神経により身体各所に伝達されるが、途中で何らかの不自然な刺激があると筋肉や神経を疲労させ不快な症状の原因となる。
長い時間同じ姿勢では欝血が起きるし、首や肩を動かすことは肩こりや首のこりの防止にも役立つので、寝相などは気にかけることなく気ままに寝返りができるような寝具であり、枕であることが望ましい。
枕の良否は枕だけではなく使用される寝具全部との調和の上から考えられなければならない問題でもある。

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